診療実績 2021
近年の入院患者さんの疾患ごとの内訳は、グラフ1に示すとおりです。F0には認知症、F1にはアルコール依存症、F2には統合失調症、F3にはうつ病や双極性障害、F4にはパニック障害や適応障害、強迫性障害、F5には摂食障害、F6にはパーソナリティ障害、F8には自閉スペクトラム障害が含まれます。F3のうつ病および双極性障害の入院患者の比率が最も高く、F2の統合失調症などが次いでいます。R4年度はR3年度よりは減少しましたが、のべ300名を超え、摂食障害の患者さんも引き続き受け入れています。
R4年度は病床利用率が前年より低下し、月ごとにばらつきもありました。病院全体では、コロナ対応のため低下しています。
入院患者さんの平均在院日数はグラフ3のように推移しています。およそ1ヶ月程度の入院期間となっています。市民病院全体では11日を切って、年々短縮しています。
高齢化とも相まって身体疾患と精神疾患の両方の治療が同時進行で必要な患者さんが増加しています。精神疾患がある程度以上重症な場合は、精神科病棟で入院し、各診療科の先生方のご協力をいただいて身体疾患の治療をする、例えば手術をしていただくこともあります。グラフ4のように、R4年度は入院患者さんのうち49名16.2%が上記のような身体的にも重症な患者さんで、過去最多でした。この加算には該当しない身体合併症の患者さんも、同様に各診療科の先生方のご協力をいただいて治療を行っています。
電気けいれん療法の施行件数と患者数はグラフ5の通りです。重症のうつ病の患者さんを中心に、薬物療法で効果がない場合、副作用で薬物療法が十分に行えない場合、身体的な衰弱を避けるため速やかな改善が必要な場合などに、麻酔科の協力のもと治療を行っています。R4年度は37名の患者さんに対して、のべ483回行いました。
外来の初診患者さんはグラフ6のように少しずつ減ってきています。精神科クリニックを受診する患者さんが増えているためと推測されます。また、28年8月から紹介状なしの初診の患者さんからは7000円+消費税を徴収するようになったこと、コロナ禍が続き、受診控えなどの影響もあるかも知れません。
外来初診患者さんの疾患別の内訳は、グラフ7のようにパニック障害や適応障害などが含まれるF4の患者さんが最も多く、F3のうつ病、F31の双極性障害の患者さん、F0にあたる認知症の検査依頼の患者さんも多くなっています。
紹介率、逆紹介率はグラフ8に示す通りです。ご紹介いただいた患者さんも安定されたら、できるだけより近くの診療所、クリニックで外来加療が継続できるよう、病院全体の方針の沿って逆紹介をすすめています。
精神科以外の診療科から診察依頼のあった患者さんの数も、グラフ9のように入院患者さんでは年々増加しています。R4年度は、コロナ禍の影響で入院患者数が伸び悩んだにもかかわらず、依頼件数は900件を超えました。さまざまな身体疾患に伴って、精神的な不調を来すことは決して珍しいことではなく、身体的な治療がスムースに進むためにもメンタルケアは非常に重要です。当院精神科はざまざまな身体疾患のメンタルケアに力を入れています。 特に精神科リエゾンチームを中心として、せん妄の予防や早期からの対応に取り組んでいます。
救命救急センターには多くの重症患者さんが入院してこられ、高い頻度で「せん妄」と呼ばれる急性の混乱状態に陥り、大きな苦痛を感じたり、身体的な治療の妨げになります。当院精神科はグラフ10に示すように、休日も含めて毎日救命救急センターへ出向いて、必要な患者さんに対して早期からメンタルケアにあたっています。R4年度は救命救急センターへ入院した患者さんの22.3%に対応しました。
グラフ11に示すように、R4年度は精神科を除く全入院患者のうち、6.39%にあたる患者さんのメンタルケアを行いました。近年増加傾向にある理由は、精神科リエゾンチームを中心にせん妄の予防的介入を積極的に進めていることも一因と考えられます。どの診療科に入院しても、メンタルケアの必要が生じれば速やかに対応いたします。
当科では、入院治療を受けられた患者さんがどのような感想を持って退院されたかを患者満足度という指標で経時的に調べています。用いているのはCSQ-8Jという指標で、4点満点で8項目を評価していただくので、満点は32点となります。なかなか満点をいただける患者さんは少ないのですが、平均して26-28点で推移しています。(グラフ12)