心筋炎
ウイルス感染などをきっかけ心臓の筋肉に炎症が起こり、心臓の収縮力が低下したり、不整脈を起こしたりする疾患です。炎症を抑えるステロイドやガンマグロブリン投与、重症度に応じて強心薬、末梢血管拡張薬といった治療を行います。このうち、非常に短期間のうちに激しく病状が悪化するものを「劇症型心筋炎」と呼び、数時間の経過でショック状態に陥り命に係わる状態です。この場合にはECMO(エクモ:体外式膜型人工肺):体に挿入した太い管から血液を吸い出し、人工肺に送って酸素化し、体内に送り戻すポンプをつけて、体外循環管理を行います。これにより弱った心臓を一時的に仕事から解放して休ませ、その間の体への循環を維持することができます。この間に心臓の炎症が治まって回復するのを待機します。
動脈管閉鎖後の血管造影写真
動脈管開存に対する閉鎖栓のいろいろ
動脈管開存症
大動脈と肺動脈の間を橋渡ししている血管が動脈管です。胎児期には必要な血管ですが、出生後、呼吸をして肺が働き始めると必要なくなるため一般的には生後数日以内に自然閉鎖します。これが残ってしまったものが動脈管開存症です。動脈管を通じて肺に多量の血液が流れ込むため、心臓、肺動脈に負担がかかります。負担の程度はだいたい動脈管の大きさに比例します。また小さい動脈管でも感染性心内膜炎(前述)の原因になったり、成人期に高血圧になると短絡量が増えて心不全の原因になったりすることもあります。未熟児や生まれて間もない新生児では点滴薬で閉鎖を試みることもありますが、それ以降では薬の効果はほぼ出ないため、コイル、デバイス(閉鎖栓)での閉鎖が必要です。当院では271例のコイル閉鎖術を行ってきましたが、他のデバイスの発達により国内での販売が終了となったため、今後は以下のデバイスでの閉鎖を行っていくこととなります。ADO-I(Amplatzer Duct Occluder)は国内初のデバイスとして2014年に認可され、大きい動脈管を安全かつ容易に閉鎖することが可能になりました。当院は初年度から認可を得て治療を行っています。動脈管のデバイス閉鎖術の認可施設は広島県内では当院のみであるため多くの症例が当院へ集まってきています。また2018年にはADO-II、2021年にはピッコロオクルーダーが認可され選択の幅が広がっています。ピッコロオクルーダーは特に低出生体重児にも有用なデバイスです。現在は段階的に低体重(2㎏未満)の患者さんへの適応を拡大しているところで、この先、1000g未満の未熟児への拡大も見込まれています。当科ではADO-I及びADO-IIは60歳以上の成人も含めてそれぞれ89例・11例(2023年12月現在)、ピッコロオクルーダーは17例の経験があります。ただしADO-I は6㎏未満、6か月未満は原則対象外、ADO-IIも6-8㎏未満では適応にならないことが多いため、6㎏未満ではより特殊なデバイスが必要になることが多くあります。Amplatzer Vascular Plug(AVP)は日本では動脈管以外の血管閉塞用に認可されているデバイスですが、海外では動脈管閉塞に良好な成績が報告されており、当科においても倫理委員会の認証を得て2016年からこれを用いた閉鎖を開始し、2.5㎏の赤ちゃんを含む31例(2023年12月現在)に閉鎖治療を行い良い成績を収めています。これらの工夫により近年では未熟児を除く98%の患者さんの動脈管をカテーテル治療で閉鎖できるようになってきています。
心室中隔欠損
右心室と左心室を隔てる心室中隔に欠損孔が開いている疾患です。この欠損孔を通して右心房、右心室肺動脈に多量の血液が短絡して流れ込むため、心臓、肺動脈に負担がかかります。負担の大きさは一般に欠損孔の大きさに比例します。欠損孔が小さいと負担が軽いため特に治療はせず経過を見ることもあります。欠損孔が大きいと(早い症例では生後1-2か月から)多呼吸、発汗過多、哺乳不良、体重増加不良などの心不全症状が出現します。利尿剤、強心剤、水分制限などで管理し、それでも体重増加が得られない場合、泣いた後に循環不全で真っ白になる場合、呼吸器感染を繰り返す場合などは早急に開心術が必要です。そうでない場合は体重増加を待機し、輸血なしで手術が可能な7-8㎏に達した段階での手術を考えます。中くらいの大きさである場合は、成長を待機して幼稚園の間にカテーテル検査で負担の程度を詳細に評価し、一生そのままで過ごしてよいか、閉鎖したほうが良いかを判断します。また、欠損孔が小さくても大動脈弁が欠損孔に引き込まれて変形が起こった場合には、大動脈弁機能が失われてしまわないように孔を塞ぐ手術が必要です。手術をしなかった場合、または手術後に短絡が残っている場合には、感染性心内膜炎(前述)の高リスクとなるため、歯科処置などの場合には予防が必要です。
心房中隔欠損 閉鎖栓
心房中隔欠損
右心房と左心房の間を隔てる心房中隔に欠損孔が開いている疾患です。この欠損孔を通して右心房、右心室、肺動脈に多量の血液が短絡して流れ込むため、心臓、肺動脈に負担がかかります。症状の出方が緩やかなため、見つかった時に自覚症状がほとんどないことも多いのが特徴です。しかし放置すると中年期以降に心不全、不整脈、肺高血圧が進行してきます。肺高血圧は非常に状態が進行してしまうとかえって閉鎖できなくなったり、不整脈ではいったん生じるとその後に閉鎖しても不整脈は消えなかったりします。このため幼児期以降ではあまり待機せず(見つかったら遅くとも20歳未満に)治療することが薦められています。この治療は施設及び術者認定が必要な特殊手技です。当院は2007年(日本認可の翌年)に全国で11番目の施設として認定を受け、これまでに555例の(2023年12月現在)症例を治療してきました。この認定施設は中国地方で3施設、広島県内では当院1施設のみであるため近隣の県からの患者さんを含め多くの症例が当院へ集まってきています。心房中隔欠損は先天性心疾患であるため成人の方でも当科で治療にあたっています。それゆえ60歳以上の患者さんも少なくありません。ただし、この治療は全例に適応となるわけではなく、欠損孔の周囲にデバイスで挟むだけの十分なリム(縁取り)が必要です。現在3種類のデバイスが使用可能になり、治療可能な患者さんの幅が広がりました。これにより約8-9割の患者さんが外科手術ではなくカテーテル手の治療が可能になっています。この手技は手技中に心房中隔欠損の状態、デバイスの留置状態などを詳細に観察する必要があるため、全身麻酔下に経食道心エコー(胃カメラのような直径1cm弱の管の先端に心エコー検査機器が装着されているものを食道内に挿入して関するエコー検査)行う必要があります。入院期間は合併症などなければ標準で5日間です。
カテーテル治療で閉鎖できない場合には開胸手術をします。体格、孔の大きさ、肺血管の状態などにより、正中(胸の真ん中)を切開する場合と、側面(右側のわきのあたり)を切開する場合があります。
感染性心内膜炎
血管内に侵入した細菌が心臓、大血管の内側の壁に固着し、そこで増殖して細菌の巣ができてしまう状態です。弁の逆流、短絡(閉鎖後の遺残含む)、異物(人工血管、ステント、コイル、デバイスなど)が挿入されているなどの場合に起こりやすくなります。細菌が血管内に入る可能性のある処置(抜歯、歯髄除去、一部の手術)の前には予防的に大量の抗生剤を内服することが薦められています。気づかない間になってしまっていることもあります。原因がはっきりしない発熱が続く、もしくはいったん下がってもまた発熱する、を繰り返す場合には血液培養を行い、血管内に菌が入っていないかどうか検査を行って早く診断することが重要です。いったんなってしまうと4-8週間の間入院の上で連日点滴治療を行うことが必要で、これでも治らない場合は手術が必要になることもあります。
肺高血圧
肺血管が硬く、広がりにくくなるために肺の血管の圧が高くなる疾患です。肺血管自体に問題がある場合、他の疾患の影響で高くなる場合、先天性心疾患の影響で起こる場合などがあります。肺血管を拡げる内服薬や持続的に酸素を吸う治療(在宅酸素療法)などを行います。非常に重症の場合にはお薬の持続点滴を行います。
不整脈
心臓の中の電気刺激の発生や伝達に問題が生じ、心臓のリズムが乱れるものです。軽症であればほとんど症状がないため経過観察となりますが、頻度が多い、それにより血行動態が悪くなる場合は治療が必要です。内服治療を行うこともありますが、発作的に起こるものでは起こった時に注射薬を急速投与する、電気ショックをかける、などの治療が必要になることもあります。発作が反復する場合には根本的に発作を消失させるために、発作のもととなる心臓内の部分を電気的に焼灼する「カテーテルアブレーション」を行うこともあります。カテーテルアブレーションは体格の小さい小児例、複雑な先天性心疾患では特殊な技術を要するため専門施設へ紹介します。
心筋症
心臓の筋肉がいろいろな原因により正常に機能できなくなる状態です。収縮力が弱く心臓が拡大する「拡張型心筋症」、筋肉が異常に肥大して動きにくくなる「肥大型心筋症」、心筋が硬くて広がりにくい「拘束型心筋症」があります。心臓の負担を取る内服薬や心臓再同期療法という特殊なペースメーカー植え込みといった治療方法が考えられます。非常に重症の場合には心臓移植を視野に入れ、移植施行施設への連携を行います。
川崎病
主に5歳以下の小児に起こりやすい全身の血管炎です。心臓の筋肉に血液を送る冠動脈に炎症を生じることが特徴的で、炎症が強いと「冠動脈瘤」が後遺症として残ってしまうことがあります。冠動脈瘤をなるべく作らないよう、早期に炎症を抑える治療が必要です。治療初期には頻回の血液検査、心エコー検査で炎症の経過、冠動脈の状態を確認しながら超大量ガンマグロブリン療法、アスピリン内服といった治療を行います。当院では、特に重症で超大量ガンマグロブリン療法では炎症の鎮静が図れない場合には「血漿交換」という集中治療を行っています。これらの治療方針により治療成績が向上し、近年では冠動脈瘤が残存する症例が非常に減少しています。
先天性心疾患・成人先天性心疾患
「生まれつきの心臓の構造的な問題」を先天性心疾患と呼びます。心雑音やチアノーゼ(体の酸素が低く、青く見えること)、検診の心電図異常、レントゲンの異常などで発見されることが多いです。近年では胎児期から診断がつくこともあります(胎児心エコー検査)。発生は100人に1人と言われ、決して少なくない疾患です。また、小児期に診断、治療された患者さんが成人期に到達する、もしくは成人期になって新たに見つかることもあり、「成人先天性心疾患」と呼ばれるようになってきています。先天性心疾患はまず最も負担が少ない心エコー検査で診断します。小さい異常であれば心臓、体への負担が少ないため特に治療をせず経過観察することもありますが、心臓、肺、体へ負担がかかっている場合には積極的な治療を要します。内服薬(利尿薬、強心薬、末梢血管拡張薬)などを導入して負担を軽減し、さらにカテーテル治療や外科手術が必要かどうかを判断し、それらを行います。
ファロー四徴
大きな心室中隔欠損、肺動脈狭窄(弁下、弁、弁上)、大動脈騎乗、右室肥大という4つの徴候を併せ持つ疾患です。肺血流量が少なく、体へ酸素の少ない静脈血が混ざって流れ込むため体が青く見える「チアノーゼ」を呈します。また成長に伴い特に弁下狭窄は進行しやすく、だんだんチアノーゼが強くなってきたり、発作的にチアノーゼが強くなって脳の酸素も低下してぼーっとしてしまう「チアノーゼ発作」を起こしてきたりします。これをできるだけ軽減する目的で、当科では新生児期にバルーン肺動脈形成術を積極的に行っています(86例:2023年12月まで)写真右。狭い肺動脈弁を広げることにより、肺血流量を少しでも増やす弁下狭窄は筋肉の収縮であるためバルーンでは拡げられません)ことによりチアノーゼは軽減し、心内修復術までにチアノーゼ発作を合併する例、バイパス手術(BTシャント手術)を必要とする例は減少しています。また近年では、非常に細い主肺動脈を持つ症例に対してはステント(一番下の項目をご参照ください)を留置して肺血流量を確保する方法も行っています。これらのカテーテル治療を行ったうえで肺動脈弁下の筋肉の収縮を抑える薬(β遮断薬)の内服をしながら成長を待機し、8㎏前後で心内修復術を行います。
心内修復手術の時に肺動脈弁の周辺を拡大するため、術後には肺動脈弁の閉鎖不全が残ることが少なくありません。若年期にはあまり問題とならないことも多く、学校での運動制限まで要することは少ないですが、成人期以降に右心室が拡大して徐々に右心室の機能が低下することがあります。その場合は右心室の大きさや機能をMRI検査やカテーテル検査で評価し、必要であれば肺動脈に人工弁を入れる手術を行います。これまでは開胸手術での弁の植え込みが主流でしたが、2023年4月から日本でもカテーテルによる肺動脈弁(Harmony valve)植え込み術が可能となりました。当院は広島県内で唯一のこの方法を施行できる認可施設となっており、既に始まっています。開胸をする必要がないため負担が少なく、入院期間が非常に短い(平均5日)というメリットがあります。今後、この方法での治療が拡大すると考えられています。
房室中隔欠損
以前は「心内膜床欠損」と呼ばれていましたが、近年では「房室中隔欠損」に統一されています。心室中隔と心房中隔にまたがって欠損があり、そのため二つの房室弁(三尖弁と僧帽弁)が分かれず一体につながったような形(共通房室弁)になっています。心室中隔欠損や心房中隔欠損と同様に欠損孔を通して右心房、右心室、肺動脈に多量の血液が短絡して流れ込むため、心臓、肺動脈に負担がかかりますが、それだけではなく共通房室弁で逆流が起こりやすいことも問題となります。このため負担は大きく、心不全や肺高血圧が進行しやすいという特徴があります。心室側の欠損が非常に小さい症例を除き、乳児期後半までに心内修復術が必要です。この時、欠損孔をふさぐだけではなく共通房室弁を分けて二つの弁を作る必要があります。ここが手術が難しい理由です。弁が十分開き、かつしっかり閉じる状態を形成することが難しいからです。体重が小さいと手術はさらに難しくなるため早い時期に心不全のコントロールがつかなくなった場合には、姑息手術(一時的に心臓の負担を取るための手術)を行うこともあります。肺動脈をバンドでしばって細くし、肺動脈へ流れ込む血液量を減少させ、心不全を軽くします(肺動脈絞扼術:PAB; Pulmonary Arterial Banding)。この状態で成長を待機し、心内修復術へ進みます。心内修復術後には、房室弁の狭窄、逆流の程度に注意が必要です。
肺動脈閉鎖/心室中隔欠損
右心室と肺動脈の間の交通が閉鎖しているため、通常の流れがない状態です。肺動脈への血流は多くの場合、動脈管を通じて大動脈から供給されています。動脈管は生後数日で閉鎖する性質を持っているので、閉鎖しないようにプロスタグランジンという薬を持続的に点滴投与する必要があります。これで2-4週間管理し、動脈管の代わりになる通路を手術で作ります。細い人工血管を大動脈の枝と肺動脈の間に付ける手術でBTシャント手術と呼ばれます。これにより肺へ流れる血流を確保して成長を待機し、8㎏前後でラステリ手術という心内修復術(心室中隔欠損を閉鎖し、右心室から肺動脈へは弁付き人工血管を使った通路をつける)を行います。この弁付き人工血管は大きくなることはないため成長に伴い太さが足らなくなってきます。そこで、小学校高学年~中学校の頃に、大きなサイズのものに入れ替える手術が必要になってきます。成人サイズになった時に弁が硬くて動きにくい、もしくは逆流が強くて負担が大きい場合には、近い将来日本でもカテーテルでの肺動脈弁植え込みができるようになることが見込まれています。
大動脈縮窄・大動脈離断
大動脈の一部が非常に狭い、または完全に途切れている疾患です。多くの場合、動脈管が開いている間は下半身の血流は動脈管から供給されていますが、動脈管の閉鎖とともに下半身に血液が流れなくなり、腎不全、肝不全、ショックになる疾患です。動脈管を開ける薬(プロスタグランジン)を投与しながら管理し、大動脈弓の形成手術と、心内に心室中隔欠損などがあれば同時に治します。稀に非常にゆっくり進行することで他の供給血管が徐々に育って何とか下半身の血流を供給することでショックを免れ、後になって見つかる例もあります。心内に他の問題がない場合、または手術後にまた狭くなってきた症例などではカテ―テルによるバルーン血管形成術を行うことがあります。
単心室
通常2つある心室のうち1つが低形成で、1つの心室として使えない場合、2つの心室が癒合したような形態になっていてかつ2つに分けられない場合、房室弁・出口の狭窄などが原因で心室から大血管への通路が十分確保できない場合などが、単心室と呼ばれる状態です。非常にいろいろな種類の形態がありますが、目指すところは一つしかない心室を体への駆出に用い、肺へは心臓を介さない経路を作る「フォンタン手術」になります。まず、上半身から還ってきた静脈血を肺動脈へ流すように、上大静脈と肺動脈をつなぐ手術:グレン手術を生後5-7か月ぐらいで行います。その後、下半身からの静脈血も肺動脈に流すように、下大静脈を人工血管を使って肺動脈に繋ぐ手術:フォンタン手術を2歳前後に行います。これにより体へは酸素を含んだ動脈血が、肺へは酸素の少ない静脈血が流れるようになり、酸素の状態のみで見ると正常とほぼ同じになります。しかし、肺へは心臓というポンプが働いていないため、肺血管の状態が良くないとこの流れは成立しません。肺血管の状態は、肺動脈の太さ(太いほうが良い)、肺動脈の圧(低いほうが良い、流しやすい)、肺動脈の抵抗(硬さ:低いほうが良い、流しやすい)で決まります。したがってグレン・フォンタン手術に進むまでに肺動脈をよい状態にもっていく管理が非常に難しく、かつ重要になってきます。このため、手術に到達するため複数回のカテーテル検査やカテーテル治療が必要になることが多いです。また条件が整わなければグレン・フォンタン手術に進めなかったり、これらの手術をしてもあまりよくない状態になったりすることがあります。フォンタン手術は「正常に治す手術」ではなく、体の静脈圧は正常より高い状態になってしまうため、運動能力は正常よりは低く、また長期の後にはそれによる合併症が出てくることもあります。うっ血による肝臓の硬化、蛋白漏出性胃腸症などです。従って生涯に渡るしっかりとしたフォロー・管理が欠かせません。
このほかにも完全大血管転位、総肺静脈還流異常症、修正大血管転位など、様々な先天性心疾患が存在し、それらすべての診療を循環器小児科で対応しています。
そして、以下のようなカテーテル治療も行っています。
a) BAS(バルーン心房中隔裂開術)
新生児の心房中隔欠損孔を拡大し、右心房と左心房の間の交通を良くする方法です。適応は完全大血管転位、三尖弁閉鎖、純型肺動脈閉鎖、僧帽弁閉鎖などです。大腿静脈または臍静脈(生後0-1日の場合)から挿入したバルーンカテーテルを右心房から左心房に通過させ、左心房内で拡張させたバルーンを、右心房側に素早く引きぬきます。バルーンは固く、卵円孔という隙間が裂けて広がり、心房間の交通を十分に確保することがせきます。完全大血管転位の場合には、酸素を多く含んだ血流が左房側から右房側へ流れることで大動脈の酸素飽和度上昇が期待できます。また三尖弁閉鎖や僧帽弁閉鎖例では、それぞれ体静脈、肺静脈から還ってきた血流をとなりの心房へ流す道が確保できるので、体循環・肺循環血流が確保されます。
b) 弁の狭窄解除
希釈造影剤を注入してバルーンを拡張させ、開放の悪い弁を形成(裂く)方法です。対象は大動脈べbbm及び肺動脈弁です。年齢が大きくなり、肺動脈弁の弁輪径が大きくなるとバルーンを2個同時に使用して行う必要があります。
c)血管の狭窄解除:バルーン血管形成術、ステント留置術
大動脈縮窄症、左右肺動脈狭窄の解除などが行われます。まずはバルーン拡張術を考慮しますが、非常に硬い病変(狭窄)では、バルーンでは十分に拡がりきらない、またはいったん広がったように見えてもバルーンをしぼませるとすぐに元に縮んでしまう、ということがあります。その場合はステント(金網でできた筒状のもの)留置を考慮します。ステントは、次に手術するまでの間、一時的に置いておく場合と(動脈管依存性の先天性心疾患の動脈管に置く場合)、入れたもので一生過ごしていく場合があります。子供の場合、体格の成長を考える必要があるので、一生過ごしていく予定の場合は、ある程度体が大きくなった段階で入れることを考えます。
ステント留置