広島市民病院は、昭和27(1952)年8月、まだ原爆の爪痕があちこちに残る広島に設立されました。当院は、広島市の交通の要衝としての立地条件と県内最大の病床数(743床)に恵まれ、地域がん診療連携拠点病院、総合周産期母子医療センター、地域医療支援病院に指定され、「患者さんと協働して、心のこもった、安全で質の高い医療を行う」ことを基本理念に人々の命と健康を担う地域中核的病院として日々成長を続けています。現在、広島にはいくつか「広島市立」あるいは「市民病院」という語を名称に含む病院がありますが、広島で市民病院と言えば誰もが広島市民病院を思い浮かべるほどに、当院は広島の人々に親しまれ、頼られ、かつ支えられて今日に至りました。
当院は、救急医療ではいち早く北米型の救急外来(ER)を取り入れ、夜間・休日を含む軽症から重症、超緊急の様々な患者さんへ対応することを特徴とします。中でも心疾患、脳卒中の患者数は多く、その他の外科疾患でも昼夜を問わず重症例に対応し、毎日の様に夜間緊急手術や急性心筋梗塞に対するカテーテル治療を行っています。また、がん、周産期医療において当院が担当する件数は多く、大学病院を除く市中病院での全身麻酔手術は国内屈指の件数です。
医療の進化は留まるところを知りません。近年、抗がん剤を初めとするたくさんの治療薬が登場し、がんと診断されても放射線治療や抗がん剤による治療を受けながら社会生活を続けられることが多くなり、ロボット手術など低侵襲手術の発達により、高度な手術を精緻な技術で、従来よりも侵襲性を少なくして行えるようになりました。当院は心臓弁膜症に対するカテーテル弁置換治療の認定施設で、これまで治療できなかった高齢者の治療も行っています。令和4(2022)年には抗がん剤治療等に使う無菌治療室を整備し、令和5(2023)年には手術ロボットのダヴィンチを2台に増設しました。新型コロナウイルス感染症については、他疾患で当院通院中、あるいは基礎疾患のために高度医療が必要な患者さんを中心に受け入れを続けています。
一方、このような医療技術の高度化と人口の減少・高齢化が進む中、各医療機関に求められる役割は大きく変化しつつあります。令和6(2024)年4月から施行された医師の働き方改革は、医師の働き方を日当直の在り方や連続して勤務できる時間等を含めて大きく制約することになりました。私達は、これらの変化の中でも一人でも多くの患者さんに最善の医療を提供するべく、新たな人の配置、機械化・デジタルトランスフォーメーションを進めるとともに、令和6(2024)年5月から新たな病床利用システム(E-BED)を立ち上げ、従来よりも多くの皆さんに入院いただける道を開きました。一方、これらの改革を実行に移すためには、入院中の患者さんの状態に合わせた病室の移動や、従来よりも短い入院での退院や他施設への転院をお願いすることも必要になります。
そのため当院は、今後いっそう入院前後の外来での医療支援を充実させ、他の医療機関との連携を密にし、広島および近隣地域の病院群の中でも中核的な役割を担うことを目指します。そしてこれらのことを、病院で働く職員はもとより、病院を訪れる患者さんやご家族、およびその周囲の人達とともに作り上げていきたいと思っています。
当院を訪れるすべての患者、ご家族の皆さん、また関係する皆さんに、今できる最善の医療を実現するため、私達はあらゆる努力を惜しまず、新しい可能性に挑戦する決意です。世界の誰もが知っている広島で、人々のいのちと健康を守る広島市民病院を、どうぞ宜しくお願いします。
令和6年5月1日
病院長 秀 道広
令和6年5月1日
地方独立行政法人広島市立病院機構広島市立広島市民病院
病院長 秀 道広
広島市民病院の病院医誌第39巻の「巻頭言」
EAACI(欧州アレルギー・臨床免疫学会)発表
2023年度ILDS(国際皮膚科学会連合)功労賞授賞式
論文・研究業績