耳鼻咽喉科・頭頸部外科 (じびいんこうか・とうけいぶげか)
対象疾患と治療方法
耳鼻咽喉科・頭頸部外科全般を対象としています。
耳疾患
慢性中耳炎・真珠腫性中耳炎に対する手術治療
慢性中耳炎では鼓膜に穴が開いているため、耳だれを繰り返したり、難聴を来たします。従来から入院で行っている鼓室形成術と共に、日帰り手術の鼓膜接着法や自己血清点耳療法を積極的に行っています。
小児難聴
当院は新生児聴覚スクリーニングの2次精査病院です。乳幼児の聴力検査を専門的に行う言語聴覚士が複数在籍し、聴性定常反応(ASSR)を始めとした高度な聴力検査を行い、原因の同定を行っています。また難聴の遺伝的な側面からも専門的な遺伝子検査、カウンセリングを通して精査を行っています。
人工内耳
補聴器でも補いきれない高度の難聴に対して、2009年度より人工内耳埋込術を開始しました。小児例はもちろん、近年は成人例も増えています。当院では正円窓アプローチによる蝸牛窓開窓を導入し、残っている聴力の温存に努め、傷も最小とする、低侵襲手術を行っています。
顔面神経麻痺
原因不明の顔面神経麻痺は脳よりも耳の奥にある顔面神経の障害によって起こります。副腎皮質ホルモン等の内服、点滴での治療を行います。場合によっては高度麻痺症例に顔面神経減荷術を行っています。
鼻副鼻腔疾患
低侵襲で効果的な治療を目指し、内視鏡手術を積極的に行っています。対象疾患は慢性副鼻腔炎、鼻中隔彎曲症、肥厚性鼻炎、アレルギー性鼻炎、鼻副鼻腔腫瘍などです。
アレルギー性鼻炎は、薬物療法でコントロール困難な場合、レーザー治療や後鼻神経切断術を行っています。抗原特異的免疫療法(皮下投与、舌下投与)も行っています。
口腔咽頭
習慣性に扁桃炎を繰り返す場合や扁桃病巣感染症の方に口蓋扁桃摘出術を行っています。
睡眠時無呼吸症候群の検査は、自宅で可能なポータブル機器による簡易検査を実施しています。閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対する治療は、CPAPやスリープスプリント(歯科で実施)による保存的治療や手術(口蓋扁桃摘出術、アデノイド切除術、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術など)を行っています。
喉頭気管
音性障害に対する手術として、声帯ポリープ切除などの喉頭顕微鏡下手術、反回神経麻痺に対する甲状軟骨形成術や披裂軟骨内転術などの音声改善手術を行っています。手術適応でない場合は言語聴覚士と協力して音声言語治療を行っています。
近年誤嚥性肺炎が社会的に問題となり、当院でも嚥下評価のニーズが高くなっています。言語聴覚士とともに嚥下検査食を用いた嚥下内視鏡検査や嚥下造影検査を用いて評価しています。リハビリだけでは改善しない症例に、輪状咽頭筋切断術、喉頭挙上術などの嚥下防止手術、声門閉鎖術などの誤嚥防止手術を行っています。
頭頚部腫瘍 甲状腺腫瘍
耳、鼻腔、副鼻腔、口腔(舌・歯肉・頬粘膜など)、咽頭、喉頭、唾液腺(耳下腺、顎下腺)、甲状腺などの良性腫瘍、悪性腫瘍(がん)の治療を専門的に取り扱っています。
頭頸部がんに対しては話す、食べるといった機能温存に努めながら病気の進行に合わせて、放射線療法、化学療法、手術を組み合わせた集学的治療を行っています。それぞれの患者さんの社会的背景や希望を重視して治療方法を選択し、放射線治療科、形成外科、内視鏡科、外科、歯科だけではなく、緩和ケアチーム、NSTチームとの密接な連携の元に治療に当たっています。
上顎癌に対して超選択的動注化学放射線治療と手術を併用した治療を行っています。
内視鏡科と合同で、内視鏡的粘膜下切除術(ESD)も実施しており、下咽頭表在癌(早期がん)の治療選択肢の一つとなっています。
喉頭全摘例には代用音声の獲得のため、プロボックス挿入術(気管食道シャント)を行っています。
甲状腺、副甲状腺手術も当科が担当しています。甲状腺良性腫瘍、悪性腫瘍、バセドウ病、原発性・二次性副甲状腺機能亢進症などが対象になります。音声をできるだけ悪化させないよう、声帯の神経群を神経刺激装置を使用して温存する手術を行っています。