部門紹介
内視鏡センターは常勤医9名,9年目医師:2名,後期研修医(3〜5年目):6名の計17名が担当し、年間に10000件超の内視鏡検査・治療を行っています。当院はがん診療連携拠点病院に指定され、かつ、北米ER型救急を目指した救急診療を行っているため、内視鏡センターの特徴として消化管癌,胆膵悪性腫瘍に対する内視鏡診断・治療や上部消化管出血,大腸憩室出血,胆道結石,閉塞性黄疸などに対する緊急内視鏡治療が多いことが挙げられます。常勤医は上部消化管(中川,宮原,後藤田,大林)・下部消化管(國弘,森藤)・胆膵(平尾,高田,河原)に分化し、専攻医とともに専門的な内視鏡検査・治療を施行しています。
上部消化管領域では約6000件/年の内視鏡検査・治療を行っていますが、特に胃癌,食道癌の診断・治療に注力しています。画像強調内視鏡(IEE:image enhanced endoscopy)であるNBI(narrow band imaging)拡大観察や超音波内視鏡(EUS:endoscopic ultrasonography)などを用いて正確な術前診断に努め、適応病変にはESD(endoscopic submucosal dissection)などの内視鏡治療を積極的に施行しています。2001年6月に胃ESDを中国地方で最初に開始し、その後に食道ESD,咽頭喉頭ESDも導入し、2019年には胃ESD:272件,食道ESD:61件,咽頭喉頭ESD:13件を行い、これまでに胃ESD:約3500件,食道ESD:約600件を経験しています。また、最近はH.pylori感染率が低下し、胃癌の病態が変化しつつありますが、H.pylori感染に関連しない胃癌として注目されている胃底腺型胃癌の診断・治療に関する新しい知見を以前から発信しています。さらに、新たな内視鏡治療法であるUnderwater EMR(endoscopic mucosal resection)やCold polypectomyを用いた十二指腸病変に対する内視鏡治療にも取り組んでいます。救急疾患では上部消化管出血や消化管異物などに対する緊急内視鏡を24時間体制で行っています。
下部消化管領域では約4000件/年の内視鏡検査・治療を行っています。最も多いのは大腸腫瘍に対する診断・治療ですが、NBI拡大観察などを用いた正確な術前診断に努め、大腸ポリープや早期大腸癌に対しては適応に応じて従来からのPolypectomy,EMRの他にCold polypectomyやESDによる内視鏡治療を施行しています。大腸ESDは2008年に導入し、2019年は68件であり、これまでに約600件を経験しています。その他、進行大腸癌に伴う狭窄にはステント治療も行っています。また、潰瘍性大腸炎,クローン病などの炎症性腸疾患に対する内視鏡診断や小腸疾患に対するダブルバルーン内視鏡を用いた内視鏡診断・治療も施行しています。救急疾患では高齢化に伴い大腸憩室出血が増加しつつありますが、大腸憩室出血が疑われた場合の早期の造影CTや大腸内視鏡前に経口洗浄液による前処置を行うことが出血憩室の同定に有効であることやEBL(endoscopic band ligation)の止血率が高いことを明らかにし、学会・論文発表し、日本消化器内視鏡学会の内視鏡ビデオライブラリーにも採用されています。
胆膵領域では、胆道癌,膵癌などの悪性疾患や膵嚢胞性病変,胆石,膵石,胆管炎,膵炎など多岐にわたる疾患が対象になります。診断には、腹部超音波,CT,MRIなどで検査を行いますが、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査),EUS(超音波内視鏡検査),EUS-FNA(超音波内視鏡下針生検)などによる精査が重要になります。当院では年間、約600-700件のERCP,約500-600件のEUS,約90-100件のEUS-FNAを行っています。内視鏡治療では、ERCPを用いての胆石,膵石に対する砕石術や、胆道狭窄,膵管狭窄に対するステント留置術の他に、EUSを用いたドレナージ治療(Interventional EUS)も行っています。さらに悪性疾患では外科手術を主軸に置きつつ、化学療法(術前,術後,切除不能)や放射線化学療法など集学的治療にも取り組んでいます。なお、術後胃症例ではダブルバルーン内視鏡を用いての検査・治療も行っています。
また、日常診療だけではなく、臨床研究,学会発表,論文作成にも積極的に取り組んでいます。JCOG(Japan Clinical Oncology Group:日本臨床腫瘍研究グループ)消化器内視鏡グループに中国地方で最初に参加し、消化管癌に対する内視鏡治療の新たな指針を作成するために活動しています。また、その他の臨床試験にも積極的に参加しており、最新の胃癌治療ガイドライン(2018年1月改訂 第5版)に掲載された、早期胃癌内視鏡的切除が非治癒切除になった場合に高齢者や重篤な基礎疾患を有する症例が原則となる追加外科切除を受けるか否かを判断する際の参考資料となる「ESD後追加外科切除例からみたリンパ節転移頻度」にも我々の治療成績が反映されています。
※当科では内視鏡検査に伴う苦痛を緩和する目的で、検査前に塩酸ペチジン(鎮痛剤)やミダゾラム(鎮静剤)を注射しており、内視鏡検査をなるべく楽に受けていただけるようにしています。なお、これらの薬剤を使用した場合には、検査当日は自動車などの運転は控えていただくことになりますので、ご了解ください。