対象医療と治療方法
脳梗塞について
―どんな病気で、どのように検査・治療・再発予防を行っていくのか?―
- 脳梗塞は、何らかの原因により脳の血管が詰まることによって、脳細胞に酸素やブドウ糖が届かなくなり、脳細胞が死んでしまう病気です。広い範囲にわたって脳細胞が死んでしまえば、命を落とすことや、重度な後遺症で介護を要する可能性が高くなります。また、たとえ狭い範囲であっても場所によっては日常生活に差し障りを生じるような後遺症が残ることがあります。脳梗塞になると1分間に190万の脳細胞が失われるとの報告もあり、一刻を争う救急疾患です。
- 脳梗塞の診断のためには、放射線を使うCTや磁力を使うMRIを行います(検査できない方もおられます)。脳の血管を観察するために造影剤を用いたCTA、MRA、あるいは頚動脈超音波検査を必要に応じて行います。血管をさらに詳しく見るために、カテーテルによる脳血管撮影が必要な場合もあります。
- 血管が詰まる原因には様々なものがあります。代表的なものは血管が動脈硬化により細くなって生じるものと心臓内にできた血栓が脳の血管に流れて詰まるものの2つがあります。また、若い方では、血管の壁の一部が裂けることによって生じる脳梗塞など特殊な原因もあります。
- 脳梗塞の根本的な治療法は、詰まった血管をもう一度流れるようにすることです(再開通療法)。これには血栓を溶かす薬剤を用いる方法(t-PA)とカテーテルなどにより血栓を除去する方法(血管内治療)があります。原則としてt-PAは発症から4.5時間以内、血管内治療は発症から16時間以内の症例に対して行われます。これらの治療は脳梗塞が発症してからなるべく早期に実施する必要があります。脳梗塞が完成する前に治療できれば、劇的に症状が良くなることがある反面、治療開始が遅れると脳出血などの合併症が生じる可能性が高くなります。よって、再開通療法は全ての脳梗塞の方の約10%程度にしか行えないのが実情です。
- 再開通療法を行っても行わなくても、脳梗塞では血液をサラサラにする治療(抗血栓療法)や脳細胞を保護する治療、血圧・血糖・体温の管理、ベッド上での安静などが病状にあわせて行われます。入院からしばらくは、何度も採血したり、症状の確認をしたり、血糖値に合わせてインスリンを使用することもあります。ベッドの上で頭を持ち上げないことが、脳に行く血流を保つために必要な場合があり、その際は不自由さを感じることもあると思いますが、症状の悪化を防ぐためできるだけ安静の指示を守っていただければ幸いです。
- また、早期からのリハビリも重要と考えられておりますので、安静度にあわせたリハビリを開始致します。ただし、当院は急性期病院であり、リハビリに費やす時間は十分とはいえません。急性期治療が終了し、積極的なリハビリが必要な場合は、リハビリ病院への転院調整を早期から行って参ります。当院では地域連携パスを用いて、どの病院に転院しても一定水準以上の医療が受けられるよう情報提供を行っております。
- 脳梗塞では、食物を飲み込みにくい、尿が出にくいという症状が出る方が多くおられます。これらは、誤嚥(ごえん)性肺炎、尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎)につながりやすく、飲み込みの程度にあわせ、食事の形態を変えたり、尿が出にくい場合はカテーテルを入れさせて頂く場合があります。感染症の治療には必要に応じて抗生物質を用います。
- 脳梗塞は、再発率が高い病気であり、急性期から再発予防を検討していく必要があります。病気にあわせた血液サラサラ薬を選び、高血圧、糖尿病、コレステロールなどを適切に管理することが重要です。適切な薬剤の選択にはCT(造影剤を用いることもあります)、 MRI(造影剤を用いることもあります)、採血、エコー(必要があれば経食道エコー)、24時間心電図など必要に応じて実施致します。さらに詳しい検査としては核医学により脳血流をみる検査(SPECT)、カテーテルによる脳血管撮影を行うことがあります。検査を行う際はその都度担当医から説明致します。
- 当院では、脳梗塞で入院された患者さんの臨床情報を個人が分からない形で集めて分析し、今後の診療に役立てております。脳梗塞では退院時の状態とともに、発症から約3ヶ月後に日常生活がどれくらいできるようになっているかが重要な指標になっております。したがって、3ヶ月後の状態をお問い合わせさせていただくことがあります。また、収集した診療情報を、必要に応じて個人が特定されない形で分析し、その結果を学会・論文等に発表するなどして、脳梗塞の診療をさらにより良いものとしていくことに努めております。ご理解いただければ幸いです。
- これまで述べてきましたことで、同意書にサインをいただく必要がある検査、治療については、その都度、別紙を用いて説明いたします。
広島市立広島市民病院 脳神経内科,脳神経外科・脳血管内治療科
脳出血について
―どんな病気で、どのように検査・治療・再発予防を行っていくのか?―
- 脳出血は、何らかの原因により脳の血管が破れ出血することによって、脳細胞が障害される病気です。症状は突然現れ、出血が広い範囲にわたっていれば、命を落とすことや、重度な後遺症で介護を要する可能性が高くなります。また、たとえ小さな出血であっても場所によっては日常生活に差し障りを生じるような後遺症が残ることがあります。出血量や出血部位により開頭手術または血圧管理を中心とした内科的治療が選択されます。
- 脳出血の診断のためには、放射線を使うCTや磁力を使うMRIを行います(検査できない方もおられます)。脳の血管を観察するために造影剤を用いたCTA、MRA、あるいはカテーテルによる脳血管撮影を行う場合があります。
図1:脳出血のCT画像 左から脳幹出血,小脳出血,被殻出血
- 脳出血の原因には様々なものがあります。代表的なものは高血圧です。その他にも血管奇形や脳腫瘍、脳に異常な蛋白が沈着し血管壁が脆くなるアミロイド血管症などが原因として挙げられます。また、常用薬で血液サラサラ薬(抗血栓薬)を服用している場合は脳出血を助長してしまう場合もあります。
- 脳出血の治療法は、出血した血液の塊(血種)を拡大させない、つまり止血することです。これには血圧管理が有効であり、多くの場合は点滴薬で血圧を下げます。抗血栓薬を服用されている場合は止血が得られにくいため、薬効を中和する薬を使用することもあります。また出血量が多い場合や髄液の循環が血液で阻害され水頭症を合併し、意識障害を認める場合は開頭手術を行います。個々の術式や麻酔方法については別紙にて説明します。
図2:手術を要した脳出血例
上段、中段は開頭血種除去術を実施した症例 下段は水頭症を合併し脳室ドレナージ術を実施した症例
- 入院からしばらくは、止血を確認するために画像検査や血圧測定、採血を繰り返します。また血糖値に合わせてインスリンを使用することもあります。血圧を低く保つため、または運動麻痺による転倒事故を防ぐためにも入院当日はできるだけ安静の指示を守って頂きます。
- また、早期からのリハビリも重要と考えられておりますので、状態にあわせたリハビリを開始致します。ただし、当院は急性期病院でありリハビリに費やす時間は十分とはいえません。急性期治療が終了し、積極的なリハビリが必要な場合はリハビリ病院への転院調整を早期から行って参ります。当院では地域連携パスを用いて、どの病院に転院しても一定水準以上の医療が受けられるよう情報提供を行っております。
- 脳出血では食物を飲み込みにくい、尿が出にくいという症状が出る方が多くおられます。これらは誤嚥(ごえん)性肺炎、尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎)につながりやすく、飲み込みの程度にあわせ、食事の形態を変えたり、尿が出にくい場合はカテーテルを入れさせて頂く場合があります。感染症の治療には必要に応じて抗生物質を用います。
- 当院では、脳出血で入院された患者さんの臨床情報を個人が分からない形で集めて分析し、今後の診療に役立てております。脳出血では退院時の状態とともに、発症から約3ヶ月後に日常生活がどれくらいできるようになっているかが重要な指標になっております。したがって、3ヶ月後の状態をお問い合わせさせていただくことがあります。また、収集した診療情報を、必要に応じて個人が特定されない形で分析し、その結果を学会・論文等に発表するなどして、脳梗塞の診療をさらにより良いものとしていくことに努めております。ご理解いただければ幸いです。
- これまで述べてきましたことで、同意書にサインをいただく必要がある検査、治療については、その都度、別紙を用いて説明いたします。
広島市立広島市民病院 脳神経内科、脳神経外科・脳血管内治療科