部門紹介
放射線治療は、手術療法、化学療法とともにがん集学的治療の三本柱の一翼を担う重要な治療手段です。近年の放射線治療の進歩は目覚ましく、強度変調放射線治療(IMRT/VMAT)、画像誘導放射線治療(IGRT)、定位放射線治療(SRT)などの高精度放射線治療が急速に普及しつつあります。このような背景から、放射線治療を受けられる患者さんは右肩上がりで増加傾向にあります。当院においてもその傾向は明らかで、年間放射線治療患者数は10年前と比較して倍増しています。日本では長い間、放射線科の一部門として放射線治療が提供されてきました。しかし、昨今の放射線治療情勢から,放射線診断部門と放射線治療部門との分離が強く求められるようになりました。当院でもその流れを受け、地域がん診療連携拠点病院として高精度な放射線治療を提供するという役目を果たすべく、2011年4月1日付けで放射線治療科が新たに開設されました。現在、当科には高精度放射線治療対応の外部放射線治療装置(リニアック)2台、遠隔操作式密封小線源治療装置1台が配備され、毎日50-60人、年間約650-750人の患者さんを治療しています。当院での年間治療患者数は広島県内第1位の実績です。
※2022年診療実績:新規放射線治療患者数592人、総放射線治療患者数(新規患者+再診患者)746例
放射線治療科は,常勤医2名(放射線治療専門医1名),診療放射線技師9名(放射線治療専門技師5名,医学物理士2名),看護師6名,受付・事務職員4名から構成されています。
2024年度放射線治療科スタッフ
治療設備紹介
放射線治療には体の外側から放射線を当てる治療と体の内側から当てる治療があります。体の外側から当てる治療を「外部照射」、内側から当てる治療を「内部照射」といいます。当院は外部照射を行う装置2台、内部照射を行う装置1台を有しており、各装置の特色を活かした治療を行っています。
当院に設置されている治療装置および関連機器
外部照射装置(リニアック)
第1リニアック室
TrueBEAM (Varian Medical Systems社製)
第2リニアック室
TrueBeam STx with Novalis (BRAINLAB / Varian Medical Systems社製)
小線源治療装置
BRAVOS (Varian Medical Systems社製)
放射線治療計画用CT装置
Aquilion Exceed LB (キャノンメディカルシステムズ社製)
Optima CT580W (GE Healthcare社製)
放射線治療計画装置
Eclipse (Varian Medical Systems社製)/ ELEMENTS ・ iPlan (BRAINLAB社製)
その他
呼吸管理システム
Real-time Position Management System (RPM System) (Varian Medical Systems社製)
外部照射
当院は高精度な放射線治療ができる治療装置を2台所有しています。
各治療装置に特徴があり、それぞれの長所を活かした治療を行っています。
TrueBEAM (Varian社製)
照射精度が1mm以下という高精度な放射線治療装置です。治療できる領域は40cmと広く、大きいサイズの腫瘍や予防的な範囲を含めた広い領域の照射もできる万能な装置です。
機能として、放射線の出力を増やし治療の時間を短くできるモードも搭載しており、息を止めて行う治療を短時間で実施することが可能です。また、従来のX線撮影を用いた位置合わせではなく、カメラによる体表面の情報だけで位置合わせを行うことができる最新の装置も搭載されています。
乳がんや食道がん、子宮頸がん、進行肺がんなど幅広い治療で活躍しています。
TrueBeam STx (BRAINLAB / Varian Medical Systems社製)
照射精度が1mm以下という高精度な放射線治療装置です。非常に細かな照射野成形機構を搭載しており小さい領域をピンポイントで治療することが得意な装置です。
機能として、放射線の出力を増やし、治療の時間を短くできるモードも搭載しており、息を止めて行う治療を短時間で実施することが可能です。また、被ばく線量が非常に少ないX線撮影を用いた短時間で高精度な位置合わせを行うことができる装置を搭載しています。
脳腫瘍、頭頚部がん、肺がん(定位照射)、肝臓がん(定位照射)、前立腺がん等の治療で活躍しています。
小線源治療
小線源治療とは、子宮頚がん等に対して放射性物質を病気の近くまで挿入して放射線照射を行う治療法です。治療を正確かつ安全に行うため、治療の体位でCT画像を撮影し、治療計画を作成します。当院のCTは撮影時に患者さんが入る装置の開口径が広く、安全に治療の準備を行うことができます。
小線源治療装置は2023年に更新しました。
新装置では照射位置精度のテストや調整が簡便に実施でき、また、始業点検や定期点検だけでなく治療直前の稼働テストが行えるようになりました。これらの機能により治療の精度や安全性がより向上しました。
CTシミュレーション ・ 放射線治療計画
放射線治療は来院されてすぐに放射線を当てることはありません。
まず、治療するための体位や使用する固定具の検討、放射線の当て方などを決めるために治療計画用のCTを撮影します。
当院の治療計画用CTは、小線源治療計画用CTと同様に通常のCTに比べ開口径が広く、より自由度の高い治療体位で撮影できます。
さらに呼吸管理システムが付属しており、呼吸によって動く腫瘍や臓器の動画像を撮影することができます。これにより、腫瘍や臓器が呼吸によって動く範囲を正確に把握でき、治療時に腫瘍以外の正常な組織に照射される放射線を減らすことが可能になります。
上記のCTで撮影した画像をもとに放射線を当てる角度や量を決定し、放射線治療計画専用のコンピュータで計算を行い、実際に治療で使用する治療計画を作成します。
この治療計画専用のコンピュータを治療計画装置と呼び、その性能によって立てられる計画の種類や質が異なります。
当院では2種類の治療計画装置を所有しており治療部位によって使い分けています。
ここで当院の特色としてあげられる脳転移に対する画期的な治療計画装置を紹介します。
通常であれば脳転移に対する治療は1度で1個の脳転移の治療のみしか行うことができず、複数個の脳転移がある場合、複数回に分けての治療を行います。しかし、当院に導入されているELEMENTS (BRAINLAB社製) という装置では、1度の治療で個数に制限なく脳転移を同時に治療する計画を立てることができます。
放射線治療のメリット
放射線治療には、“臓器の機能・形態の温存”、“がんによって欠損した組織の修復”というメリットがあります。さらに“早期がんから進行がんまで”、“頭の先から足の先まで”、“根治治療から緩和治療まで”、広い守備範囲で患者さんのお役に立てるということもメリットです.また、放射線を照射しても体に痛みや熱さを感じることはなく、放射線を照射する時間も数分と短いため、状態の悪い患者さんや高齢の患者さんも負担なく治療を受けることが可能です。
放射線腫瘍医からのメッセージ
私どもの放射線治療科では、他診療科と連携して患者さんに最適な放射線治療を提供できるように努めております。放射線治療科のモットーは,“がんを治すのではなく,がん患者さんを治す”です.それを達成するために,放射線腫瘍医、放射線治療技師、看護師、事務職員からなる“放射線治療チーム”として一致団結し,治療にあたっています。そして、それぞれの職種が技術、長所を生かして、患者さんに安心して放射線治療を受けて頂けるように心がけています。
診療放射線技師からのメッセージ
放射線治療において診療放射線技師は、治療計画用CTの撮影、患者さんへの照射、治療装置の精度管理などを担当しています。装置を取り扱うプロとして、装置の管理はもちろん、患者さんの治療の負担軽減、気持ちよく治療を受けていただくための工夫など、日々尽力しています。放射線を使用する治療なので不安もあると思いますので分からないことがあれば専門の私たちに遠慮なくお尋ねください。安心して治療を受けられるようにお力添えできればと思います。
放射線治療科看護師からのメッセージ
放射線治療科を受診される患者さんの多くは不安を抱えておられます。私たち放射線治療科看護師はがん看護専門看護師,緩和ケア認定看護師と連携しながら,安心して放射線治療を受けられるよう患者さんそれぞれの個別・継続的サポートを中心に,治療の流れや副作用などの情報提供,治療中および治療後の生活指導を行っています。
患者さんにとってよりよい治療提供ができるよう,放射線治療科内でも他職種と連携・協働しています。不安に思うこと,気がかりなことがあれば,どんな些細なことでも遠慮なくご相談ください。